前回(給与明細の「謎の天引き」、全部説明できますか?)で、職場の積立を「貯蓄・投資・保障・老後」の4象限に整理しました。今回はその中の「老後」担当、財形年金を一つずつほどいていきます。
最初に、ちょっとしたテストです。
「財形年金って何ですか?」
と聞かれて、内容をしっかりと人に説明できますか?自分の肌感ですがちゃんと説明できる人は少数派だと思います。
実は私の周りでも長年掛けている人で、ほとんどの人がこのことをしっかりと答えられませんでした。「老後のための積立」「なんか年金みたいなやつ」「若いうちに多く積み立てれば得」——だいたいそこで止まります。でも、それで困っている人はいません。なぜならみんな同じくらい知らないからです。
この記事を読み終えるころには、「財形年金とはどういうもの?、非課税ってどういう意味?、自分はいくらもらえるのか?」を、あなたが家族にやさしく説明できるようになっています。難しい話はしませんのでよろしくお願いします。
そもそも「財形年金」とは?
財形年金は、正式には
「勤労者財産形成年金貯蓄」
という、国の法律にもとづいた給料天引きの老後資金づくりの制度です。ポイントは5つだけ。
- 使えるのは「お勤めの人」だけ。勤務先がこの制度を導入している会社員などが対象で、自営業の人は使えません
- 毎月の給料から自動で天引きされ、勤務先が提携する金融機関が積み立てて運用します
- 受け取りは60歳以降に「年金」として分割で受け取ります。一括でドンともらう預金とは、そこが違います
- 最大の特典は利息に税金がかからない(非課税とはこのこと)。普通の預金は利息から約20%が自動で引かれますが、財形年金はそれが免除されます(ただし枠と条件あり。ここが今日の本題)
- 中身は勤務先によって違い、銀行の貯蓄型・保険会社の保険型などがあります
ひとことで言えば、「国が『老後のために天引きで貯めるなら、利息の税金はナシにしてあげる』と約束している制度」。👈これが本質!!!
ここまでが教科書的な説明です。では、その”特典”は実際どれくらいの価値があるのか——ここからが本題です。
お金が動く3つの期間——「積立 → 据置 → 受給」
財形年金は、人生の中で3つの期間を順番に進んでいきます。
- 積立期間:毎月コツコツ掛けていく時期(法律上、5年以上が必要)
- 据置期間:掛けるのをやめてから、受け取りが始まるまでの「待ち」の時期(1〜5年など)
- 年金受給期間:60歳以降、年金として分割で受け取っていく時期(時期については選択可能)
大事なのは、この3つの期間すべてで、積み立てたお金に利息がつき続けるということ。掛けている間はもちろん、掛け終わった据置期間も、受け取っている最中も、まだ残っているお金は運用されています。
「先に多く積んだ方がお得」と言われるのは、これが理由です。早く入れたお金ほど、利息を稼ぐ時間が長くなる。この「お得」の正体は次回(積み方編)でじっくり数字にしますが、まずは「ずっと利息がつく仕組み」とだけ覚えておいてください。
「非課税」って、結局なにが得なの?
財形年金のいちばんの売りは「非課税」。でも、何が非課税なのかを説明できる人はほとんどいません。正体はこうです。
普通の預金は、利息がついたとき、その利息から約20%(20.315%)の税金が自動で引かれます。1万円の利息がついても、手元に残るのは約8千円。財形年金は、この利息にかかる税金がゼロになります。これが「非課税」の中身です。
ただし、ここに2つの「ただし」があります。
- 枠に上限がある:非課税になるのは、保険型の場合で払い込み合計385万円まで(貯蓄型は別枠で元利合計550万円まで)。青天井ではありません
- 正しく受け取った人だけの特典:年金として要件どおり受け取れば非課税ですが、途中で解約すると、この非課税メリットは消えます(受け取り方によっては課税対象に)。非課税は「出口まで制度に乗り切った人へのご褒美」なんです
そしてもう一点、正直なところを。非課税と聞くと大きく感じますが、利回りが低い商品の非課税は、金額にすると意外と小さい。利息そのものが少なければ、その20%を免除されても、得する絶対額は小さくなります。NISAのように大きく増える可能性のある運用の非課税とは、同じ「非課税」でも重みがまったく違う——この比較は、後の「NISAとの使い分け編」で詳しく扱います。
で、結局いくらもらえるの?——「やってるから大丈夫」を確かめる
ここがいちばん大事なのに、いちばん知られていないところです。「老後は財形年金があるから大丈夫」と言う人に、「で、いくらもらえるの?」と聞くと、たいてい答えが返ってきません。
我が家のパンフレットの例で見てみます(金額は制度や時期で変わるので、あくまで一例です)。若いうちから重点積立方式(多く積み立てて)で積み立てて、受け取り原資が満額に近い550万円ほどになったケース。これを10年確定(受け取り方)の年金として受け取ると——
月およそ4.8万円を、10年間(たとえば65歳〜75歳)
これが「満額に近い」人のイメージです。けっして小さい額ではありませんが、よく考えてみてください。75歳以降はゼロになりますし、月4.8万円だけで老後の生活費がまかなえるわけでもありません。あくまでも公的年金に上乗せする形です。
つまり財形年金は、非課税枠が385万円で頭打ちな以上、制度の設計上「老後資金の主役」にはなれないんです。位置づけとしては、公的年金という土台に少し上乗せする「補助輪」。
これは「だからダメ」という話では全くありません。「主役だと思い込んでいた補助輪を、補助輪だと正しく知る」——それだけで、足りない分をNISAや預金でどう埋めるかという、次の一手が見えてきます。残高を見てニヤニヤするより、ずっと安心できます。
大前提——あなたの財形は「どのタイプ」?
ここまで読んで「うちも同じだ」と思った方、ちょっと待ってください。財形年金は、枠組みこそ全国共通ですが、中身は勤務先によってかなり違います。
- 共通しているのは法律のルール:60歳以降に受け取る/5年以上積み立てる/契約は55歳未満/非課税枠(保険型385万円・貯蓄型550万円)など
- 違うのは中身:そもそも導入していない会社もあります。そして運用先が——
・貯蓄型(銀行など):利率は世の中の金利並み。低金利のときは、ほとんど増えません。非課税といっても「ほぼゼロの利息の非課税」なので、メリットも小さめ
・保険型(保険会社など):あらかじめ決められた利率(予定利率)で運用。保障がついていることも
しかもこの予定利率は、ずっと固定ではなく、世の中の金利に合わせて見直されます。先輩や上司の「これはお得だよ」は、その人が始めた時代の金利の話かもしれません。金利が動けば、お得さも変わります。
だからこの記事の数字を鵜呑みにしないでください。あなたの答えは、あなたの職場のパンフレットに書いてあります。まずは引き出しから引っぱり出して、「予定利率」「いくらもらえるか(年金額の例)」の2つだけでも見てみてください。それだけで、ぐっと安心に近づきます。
まとめ——今日覚えてほしい4つ
- 財形年金は「国が利息の税金をナシにしてくれる、給料天引きの老後積立」。3つの期間すべてで利息がつく
- 非課税は嬉しいけれど枠は385万円・出口まで乗り切った人だけの特典。低利率だと得する額は小さい
- 満額に近くても受け取りは老後の一部期間の上乗せ。主役ではなく「補助輪」と正しく知ることが、次の一手につながる
- 受け取り方次第では税金が掛かるし、減額もある。
次回(積み方編)は、いよいよ「先輩の『この掛け方がお得』は本当か?」を、複利と実質利回りの数字で検証します。そして、掛金で家計が苦しいときの、解約以外の逃げ道もお伝えします。
※本記事は我が家の制度パンフレットと家計の整理をもとにした個人の記録です。制度の内容・利率・非課税枠・税制は、勤務先や時期、商品のタイプによって異なります。実際の加入・変更・解約の判断は、お勤め先の最新の案内と公式情報を必ずご確認ください。