皆さん給与明細を見た時こんなことを思ったことはないですか?
「この天引き、何のために払ってるんだっけ?」
財形貯蓄、団体保険、積立年金……。入社したころに「とりあえず入っておくといいよ」と勧められるままに申し込んで、そのまま十数年。毎月きちんと引かれているのに、中身を説明できるかというと、正直あやしい。そういうご家庭は多いんじゃないでしょうか。
最近はNISAがすっかり浸透して、「投資をしてお金を育てる」ことへの関心は高まっています。でもその一方で、NISAよりずっと前から続けている職場の積立は「なんとなく」のまま——これって、ちょっともったいない状態です。
電気代やEVの維持費と同じで、不安や「なんとなく」の正体は、中身を知らないこと。今回は給与明細から天引きされているものを一つずつ棚卸しして、「何のためのお金か」を1枚のマップに整理してみました。
給与明細から天引きされているもの、棚卸ししてみた
税金や社会保険料を除くと、給与明細にはこんな「積立系」の天引きが並んでいます。
- 財形貯蓄(一般財形):使い道自由の天引き貯蓄
- 財形年金:60歳以降に年金として受け取る積立(利息非課税の枠あり)
- 財形住宅:住宅取得・リフォーム目的の積立(こちらも非課税枠あり)
- 団体保険(グループ保険):職場でまとめて入る掛け捨ての生命保険(一部積立もあり)
- 終身生命保険:職場経由で入った貯蓄型の保険
- 職場独自の積立年金:勤務先経由で入る年金商品
名前を並べただけでも「年金」と付くものが複数あったり、「保険」なのか「貯蓄」なのか分かりにくかったり。たとえば財形年金をひとことで言うと「国が『老後のために天引きで貯めるなら、利息の税金はナシにしてあげる』と約束している制度」——こう聞いて「え、そうだったの?」と思った方、実は多数派です。安心してください。
一つずつの詳しい説明は今後の記事に譲るとして、まずは全体像です。
1枚で整理——「貯蓄・投資・保障・老後」の4象限マップ
- 貯蓄(いつでも使える):一般財形 — 利息はわずかだけど「先取りで貯まる仕組み」としての価値
- 老後(60歳まで原則ロック):財形年金・職場の積立年金 — 非課税メリットと引き換えに、流動性を差し出す
- 保障(万が一に備える):団体保険 — 掛け捨てで保障を買う。貯蓄機能はない
- 貯蓄と保障の中間:終身保険 — 保障と積立が混ざっていて、いちばん中身が見えにくい
- 投資(増やす):NISA — 唯一、元本変動リスクを取ってリターンを狙う枠
こうして並べると、それぞれ役割がぜんぶ違うことが分かります。「NISAと財形、どっちがいいの?」という比較をよく見かけますが、マップに置いてみると、そもそも住んでいる象限が違う。比べる前に、まず「自分はどの象限にいくら置いているか」を知るのが先でした。
「とりあえず入った」をそのままにしない方がいい理由
棚卸しをしてみて気づいたのは、どの制度にも「数字」がちゃんとあるということです。
たとえば財形年金。パンフレットには「予定利率」という数字が書かれています。でも、毎月の掛金からは保障や運営のコストが差し引かれてから積み立てられるので、実際の利回りはこの数字より低くなります。実例で計算してみると、20年積み立てた場合の実質利回りは年1%弱でした(計算のやり方も含めて、次回の記事で詳しく書きます。あなたのパンフレットでも同じ検証ができます)。
そしてもうひとつ。職場では「上司や先輩が『この掛け方がお得だよ』と言っていたから」という理由で掛金を決めている人がとても多いそうです。調べてみると、その「お得」は実際に正しかった——でも、なぜお得なのか、どれくらいお得なのか、代わりに何を差し出しているのかを説明できる人はいませんでした。中身を知らないまま掛金を上げて、家計が苦しくなっているご家庭もあるのではないでしょうか?
誤解しないでほしいのですが、「だからダメ」という話ではありません。利息と年金が非課税になる枠、給与天引きで確実に貯まる仕組み、万が一の保障——数字に表れにくい価値もちゃんとあります。大事なのは、「知らずに払い続ける」と「知ったうえで選ぶ」はぜんぜん違うということ。電気料金のプラン選びとまったく同じです。
お金の整理と、これからのシリーズ
今回の棚卸しで、我が家はこう整理しています。
- 役割が重複していないかを確認(年金系が複数あるなら、合計でいくら老後に回しているか)
- それぞれの「実質利回り」と「非課税メリット」を数字で把握する
- そのうえで、NISAとの配分を決める
次回からは、一つずつ深掘りしていきます。まずは「年金」と名の付くものの代表、財形年金を3回に分けて徹底解剖します。
- 基礎編:財形年金って結局何?——「やってるから大丈夫」を数字で検証
- 積み方編:先輩の「この掛け方がお得」は本当か?——家計が苦しいときの逃げ道も
- 出口編:貰い方で変わる税金と、解約していい唯一のケース
- その後:NISAとの使い分け・財形年金vs個人向け国債・団体保険・終身保険は入るべきか……と続きます
「ちゃんと理解してお金と向き合えば、老後は怖くない」。このシリーズはそういう気持ちで書いていきます。
家計の制度を「知らずに払う」のではなく「知ったうえで選ぶ」という意味では、ふるさと納税を5年続けてわかったことの記事も同じ視点で書いています。あわせてどうぞ。
※本記事は我が家の制度パンフレットと家計の整理をもとにした個人の記録です。制度の内容・利率・税制は勤務先や時期によって異なります。実際の加入・変更・解約の判断は、お勤め先の最新の案内と公式情報を必ずご確認ください。